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1. 米音と英音
1.1 本辞典では世界各地の英語のうちで最も大きな比重を占める米国と英国の標準的な発音(以下「米音」, 「英音」と呼ぶ)を示す.
ある言語において同じ音とされる「音素」 (phoneme) を基にして発音を示す方式は「簡略表記」と呼ばれ, 現在の言語学・音声学では / / で囲んで示すのが慣行である. 本辞典もこの方式を採用しているが, 一部の音素 (/t/, /d/, /l/ など) では日本人の使用者の便宜のために「精密表記」(以下の解説では [ ] で囲んで示すことがある)を行っている.
 
1.2 米国では全米的な標準発音は存在しなかったが, 戦後テレビの全国的な放送網が確立し, 全米向けの広域放送が日常的に聞かれるようになった. 全国放送で使われる発音では, 地方色が濃い「東部型」や「南部型」が敬遠され, 広範囲でしかも人口の過半数を占める均質的な「中西部型」が標準的と見なされるようになった. この型の発音は地域性が薄いためしばしば「一般米語」 (General American; 略 GA) と呼ばれるが, 最近ではまた「放送網英語」 (Network English) とも呼ばれる.
【地図】ビットマップ
 
1.3 英国の標準発音は元来は London を中心とするイングランド南東部の上流ないし中上流の高等教育を受けた人たちの発音であったが, 現在では全く地域性が消えた階層方言となり, しばしば「容認発音」 (Received Pronunciation; 略 RP) と呼ばれる. RP を話す人の数は英国の人口のわずか数パーセント足らずであるが, 政治・経済・教育・文化など各分野の指導層が使用するため実質的な標準発音とみなされている. また BBC 放送もこの型の英音を使用するので,「BBC 発音」 (BBC pronunciation) とも呼ばれる. しかし英国では最近社会の階層の別が崩れる傾向があり, それに伴って RP の範囲も多少曖昧になった.
 
 



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