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3. 英語の子音
3.1 閉鎖音
1 /p/ (無声), /b/ (有声)  「パ」行, 「バ」行の子音と同じく上下の唇で閉鎖が行われる: peace /p´iIPA-:s/, cup /k´IPA-turnvp/; buy /b´aIPA-I/, job /dIPA-jogh´IPA-cursa(IPA-:)b | dIPA-jogh´IPA-openob/.
 
2 a /t/ (無声), /d/ (有声)  「タ, テ, ト」, 「ダ, デ, ド」の子音では舌先が普通上の歯の裏側に付くが, 英語の /t, d/ では歯茎に付いて閉鎖を作る. その際舌先がやや上を向くことがある: time /t´aIPA-Im/, root /r´uIPA-:t/; day /d´eIPA-I/, bed /b´IPA-epsilond/.
2 b /t/, /d/  米音では次のような位置でしばしば /t/ の代りに, 舌先が歯茎に密着せず, 1 回だけ軽くたたく有声の「たたき音」が現れる. 本書ではこの音を /t/ で示す(精密な記号は [外字]).
(1) 強いアクセントを受けた母音と弱母音の間: butter /b´IPA-turnvthookedschwa/.
(2) 強いアクセントを受けた母音と音節主音の /外字/ 《⇒4》 の間: settle /s´IPA-epsilont外字/.
(3) 強いアクセントを受けた母音+/n/ と弱母音の間: twenty /tw´IPA-epsilonnti/.
(4) /t/ で終わる後に母音で始まる語が続くとき: get out /g`IPA-epsilont´aIPA-Ut/.
たたき音の /t/ の音色は「ラ」行の子音に近いので, 上の語は日本人には butter 「ラー」, settle 「ルー」, get out 「ゲウト」のように聞える. また (3) の場合は /t/ がさらに弱くなって脱落し /tw´IPA-epsilonni/ となり, 「トウェニー」のように聞えることが多い. 米音では /d/ も上の (1), (2) の条件のときにたたき音となることがあり, 本辞典では /d/ で示す. そのため body /b´IPA-cursa(IPA-:)di/, medal /m´IPA-epsilond外字/ が「ディー」, 「ルー」のように聞えることがある.
 
3 /k/ (無声), /g/ (有声)  「カ」行, 「ガ」行の子音と同じく舌面の後部が口蓋の後部と接触して閉鎖を作る: cage /k´eIPA-IdIPA-jogh/, back /b´aek/; good /g´IPA-Ud/, bag /b´aeg/.
 
3.2 摩擦音
1 /f/ (無声), /v/ (有声)  「フ」の子音 [IPA-Phi] は上下の唇が接近するのに対して, /f, v/ は上の前歯が下唇の内側に軽く触れて作られる: fine /f´aIPA-In/, leaf /l´iIPA-:f/; voice /v´IPA-openoIPA-Is/, save /s´eIPA-Iv/.
 
2 /IPA-theta/ (無声), /IPA-eth/ (有声)  舌先を上の前歯の裏側に軽く当てて作られる. 摩擦の音は次の /s, z/ よりかなり弱い: thank /IPA-theta´aeIPA-engk/, tooth /t´uIPA-:IPA-theta/; they /IPA-eth´eIPA-I/, bathe /b´eIPA-IIPA-eth/.
 
3 /s/ (無声), /z/ (有声)  /s/ は「サ, ス, セ, ソ」の子音とほぼ同じだが, それよりも摩擦の音が強い. 有声音の /z/ は /s/ と同じ舌のかまえで舌先を歯茎につけないで発音されるので, 後述する破擦音である「ザ, ズ, ゼ, ゾ」の子音 [dz] とは違う: sand /s´aend/, pace /p´eIPA-Is/; zoom /z´uIPA-:m/, lose /l´uIPA-:z/.
 
4 /IPA-esh/ (無声), /IPA-jogh/ (有声)  /IPA-esh/ は「シ」の子音に近いが, 唇が丸まり, 摩擦の音も強く暗く重い感じがすることがある. 有声音の /IPA-jogh/ は /IPA-esh/ と同じく舌の全部が口蓋の中ごろに向かうが, 舌先は歯茎につかないので, 破擦音の「ジ」の子音 [dIPA-jogh] とは違う. /IPA-jogh/ はフランス語などの外来語を除いては語中にだけ現れる: shine /IPA-esh´aIPA-In/, cash /k´aeIPA-esh/; pleasure /pl´IPA-epsilonIPA-joghhookedschwa | -IPA-joghschwa(r/, occasion /schwak´eIPA-IIPA-joghschwan/.
 
5 /h/ (無声)  「ハ, ヘ, ホ」の子音で, 母音の前にしか現れない. 口のかまえは後続の母音とほぼ同じだが, 声門が狭められるので, そこで摩擦の音が生ずる. /h/ は語末には来ない: head /h´IPA-epsilond/, behind /b外字h´aIPA-Ind/.
 
3.3 破擦音
破裂が緩慢で, 後に摩擦音が続く特殊な閉鎖音を破擦音という. ★ /tIPA-esh/, /dIPA-jogh/ のときと同様, /ts/, /dz/, /tr/, /dr/ も二つの音を密着して発音する必要があるので, 合字で示した.
1 /tIPA-esh/ (無声), /dIPA-jogh/ (有声)  「チ, ジ」の子音とほぼ同じ. 音声的には 2 音の連続だが, 日本語同様 1 音素とみなされる: cheese /tIPA-esh´iIPA-:z/, beach /b´iIPA-:tIPA-esh/; jam /dIPA-jogh´aem/, bridge /br´IPA-IdIPA-jogh/.
 
2 /ts/ (無声), /dz/ (有声)  「ツ, ズ」の子音とほぼ同じ. 日本語では 1 音素とされるのに対して, 英語では /-t, -d/ で終わる後に続く派生語尾のことが多いので, /t/+/s/, /d/+/z/ として 2 音素の連続とされ, 語末に現れることが多い: cats /k´aets/; beds /b´IPA-epsilondz/.
 
3 /tr/ (無声), /dr/ (有声)  /t/+/r/, /d/+/r/ の 2 音素の連続であるが, 後半の /r/ は後で扱う半母音の /r/ と違って破擦音 (/tr/ の場合はまた無声音) であるため, /tr/ は「ツ」と「チ」, /dr/ は「ズ」と「ジ」の中間のような音に聞こえることが多い. /tr, dr/ は語末には現れない: tree /tr´iIPA-:/, mattress /m´aetr外字s/; dress /dr´IPA-epsilons/, hundred /h´IPA-turnvndr外字d/.
 
3.4 鼻音
口中の閉鎖は閉鎖音と同様だが空気が鼻に抜ける音で, 普通は有声.
1 /m/  母音の前や語末の /m/ は「マ」行の子音: make /m´eIPA-Ik/, same /s´eIPA-Im/. ただし /p, b/ の前の /m/ は「ン」: camp /k´aemp/, number /n´IPA-turnvmbhookedschwa | -bschwa(r/.
 
2 /n/  母音や /l/ の前では「ナ」行の子音: nice /n´aIPA-Is/, many /m´IPA-epsilonni/ (/n外字/ については ⇒3. 5. 2). 語末や /s, z, IPA-esh/ の前の /n/ は軽い「ヌ」の響きの音で, 「ン」ではない: sun /s´IPA-turnvn/; sense /s´IPA-epsilonns/, pansy /p´aenzi/, mention /m´IPA-epsilonnIPA-eshschwan/. ただし /t, d, IPA-theta, IPA-eth, tIPA-esh, dIPA-jogh, ts, dz, tr, dr/ の前では「ン」: contain /kschwant´eIPA-In/, under /´IPA-turnvndhookedschwa | -dschwa(r/, tenth /t´IPA-epsilonnIPA-theta/, bench /b´IPA-epsilonntIPA-esh/, danger /d´eIPA-IndIPA-joghhookedschwa | -dIPA-joghschwa(r/, ants /´aents/, sends /s´IPA-epsilonndz/, country /k´IPA-turnvntri/, hundred /h´IPA-turnvndr外字d/.
 
3 /IPA-eng/  /IPA-eng/ は語頭には現れず, 語中で母音か /k, g/ の前, および語末に出る. 語中の母音の前では「ガ」行の子音ではなく, 「ガ」行鼻濁音(しばしば「カ°, キ°, ク°, ケ°, コ°」で表される)となる: singer /s´IPA-IIPA-enghookedschwa | -IPA-engschwa(r/ 「スィンカ°ー」 (finger /f´IPA-IIPA-engghookedschwa | -gschwa(r/ 「フィンガー」と比較), hanger /h´aeIPA-enghookedschwa | -IPA-engschwa(r/ 「ンカ°ー」 (hunger /h´IPA-turnvIPA-engghookedschwa | -gschwa(r/ 「ンガー」と比較). /k, g/ の前の /IPA-eng/ は「ン」: bank /b´aeIPA-engk/. 語末の /IPA-eng/ は軽い「ク°」の感じ: bring /br´IPA-IIPA-eng/.
 
3.5 側面音
英語では /l/ だけであるが, /l/ には次のように /l/ (明るい l)と /l/ (暗い l)の 2 種類があり, 米音のほうが暗さの程度が大きい. 両者とも普通は有声である.
1 /l/  「ラ」行の音に似ているが, 舌先が上の歯茎の中央部にしっかり接触して閉鎖を作り, 呼気が舌の両側または片側から流出するときに生ずる音で, 母音の前に現れる: lake /l´eIPA-Ik/, glide /gl´aIPA-Id/.
 
2 /l/  /l/ とは逆に feel /f´iIPA-:l/ のように母音の後または語末に現れる. feels /f´iIPA-:lz/ のように後が子音であれば暗い l のままだが, feeling /f´iIPA-:lIPA-IIPA-eng/ のように母音が続けば明るい l になる. /l/ は元来は /l/ と同じく舌先が歯茎の中央に接触すると同時に, 舌の後部が上にもり上がるために暗い音色をもつものであったが, 米音, 英音ともに最近では舌先が歯茎につかず, 「ウ」([IPA-turnm])のように完全に母音として発音する人が多くなった. このため milk /m´IPA-Ilk/ → [m´IPA-IIPA-turnmk] は「ウク」, bell /b´IPA-epsilonl/ → [b´IPA-epsilonIPA-turnm] は「ウ」のように聞える. また /l/ の前では母音の音色が多少変質し, 特に米音では /IPA-turnv/ は /IPA-openo/ のように聞えることが多く, bulb /b´IPA-turnvlb/ → [b´IPA-openoIPA-turnmb] は「ウブ」, culture /k´IPA-turnvltIPA-eshhookedschwa/ → [k´IPA-openoIPA-turnmtIPA-eshhookedschwa] は「ウチャー」のように聞えることがある. また音節主音的な /外字/ 《⇒4》 は完全に母音化して [IPA-turnm] となり「ウ」のように聞える: people /p´iIPA-:p外字/ → [-pIPA-turnm] 「-プー」, tunnel /t´IPA-turnvn外字/ → [-nIPA-turnm] 「ヌー」. ただし音節主音の /外字/ の後にさらに母音が続くときには /l/ は前半は暗いが後半はいくぶん明るくなるので /l/ の記号を使用した: bubbling /b´IPA-turnvblIPA-IIPA-eng/, ventilate /v´IPA-epsilonntl`eIPA-It | -tl-/.
このように明るい l と暗い l とは日本人の耳には別の音に聞えるので, 本辞典では特に別個の記号の /l/ と /l/ を使用して利用者の注意を喚起した. /l/ はラ行の子音に似た音, /l/ は「ウ」のような音と割り切って理解していただいて結構である.
 
3.6 半母音
音声的には母音であるが, 母音の前にだけ現れて子音の働きをする音をいう. 半母音は語頭, 語中にのみ現われ, 語末には現れない.
1 /j/  /i/ または /IPA-I/ の位置から次の母音へ移行する「ヤ」行の子音: yes /j´IPA-epsilons/, opinion /schwap´IPA-Injschwan/.
 
2 /w/  /u/ または /IPA-U/ の位置から次の母音へ移行する.「ワ」の子音に近いがそれよりも唇の丸めが強い: week /w´iIPA-:k/, which /(h)w´IPA-ItIPA-esh/, away /schwaw´eIPA-I/.
 
3 /r/  米音では音声的な性質は 2. 2. 5 で扱った /hookedschwaIPA-:/ と同じで, 従って /r/ も (a), (b) の 2 種類がある. いずれにしても音色はほとんど同じである. 英音の /r/ は舌先を上の歯茎の後部に近づける. 米音, 英音ともそれぞれの位置から次の母音へ移行する: reach /r´iIPA-:tIPA-esh/, rice /r´aIPA-Is/, arrive /schwar´aIPA-Iv/.
 
 



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