新和英大辞典第5版 メニュー 


電子増補版まえがき

 2004 年春の KOD (Kenkyusha Online Dictionary 研究社オンライン辞書検索サービス) の開始以来, その収録辞典の 1 つである『新和英大辞典』(第 5 版) は『KOD 和英』として文字通り日進月歩, その収載情報量を着実に増やしてきましたが, このたび研究社創業 100 年記念事業の一環として, 2003 年夏の出版以来積み重ねてきた新語・追加用例約 35,000 項目を第 5 版の本体に追加し, 合計約 51 万 5 千項目の増補版を実現いたしました.

 『KOD 和英』の編集方法は『新和英大辞典』(第 5 版) のそれを踏襲しました. つまり, 新聞・雑誌などから新たに語彙・語法を採集し, それに関する日本人スタッフの調査を基に英米人編集委員が英訳を加え, 日本人編集委員がその英訳と元の日本語との整合性をチェックし, 必要があれば再度英米人編集委員に戻して修正を依頼するという方法をとりました. またそれと並行して, 『新和英大辞典』(第 5 版) 既載項目の記述への追加・修正もおこないました. しかし『第 5 版』と根本的に異なるのはその作業サイクルの短さです. 1974 年の『第 4 版』の刊行から『第 5 版』のための作業開始まで 22 年, その出版までは 29 年の間隔があったことを思うと, KOD が最近の 3 年間におこなってきた月単位の増改訂は, コンピューターが英語辞書の世界に引き起こした文字通りの革命であったと思わざるを得ません. たとえて言うならば, 全集本の編纂事業にも似ていた辞書の仕事は, 今や月刊雑誌的なあわただしいものに変貌しましたが, これは時代環境の変化がもたらした進化です. 我々の身の回りに起こる変化には加速度がつき, そのサイクルは短くなり, それは国際情勢から科学技術, 法律の名称, 新型犯罪にいたるまで, 社会のあらゆる面にみられますが, 一般利用者を対象とする辞書はそれらすべての分野を対象としなくてはなりません. 「毎月追加される新語・新情報」「つなぐたびに最新版」を標榜する『KOD 和英』に寄せられる期待・要求の厳しさと, それに十分応えることのむずかしさは, 『第 5 版』以前の『新和英大辞典』のそれとは比べものになりません. 『第 5 版』で収載をためらった「オレオレ詐欺」はその後爆発的に増加し, KOD にはその後継である「次々販売」を載せなくてはなりませんでした. 1999 年, 国民金融公庫と環境衛生金融公庫が統合されてできた国民生活金融公庫は, 2008 年には「日本政策金融公庫」に統合されて株式会社となり, その名称も変わる予定です. がん診断は「スペクト」によって格段に精度を上げました. 「裁判員制度」は 2009 年にスタートする予定です. 諸国の首相・大統領などの交替劇はますますあわただしく, メディアの政治欄から一日も目を離せません. 言葉の変化の最先端に位置する流行語は更に油断できません. 賛否両論の狭間で今年の 2 月「赤ちゃんポスト」の設置が認可されました. 証券取引所の監理ポストは「監理銘柄」に改称されます. わずか 4 年前の『第 5 版』には載っていなかった「ブログ炎上」などという言葉も今ではコンピューターを使う人ならだれでも知っています. またこれら日々生まれてくる新語・新名称, 新しい語義を前にして, どれを採り, どれを見送るかもむずかしい問題です.

 言葉の世界で起こっているこの急速な変化に対応するには 24 時間作動している監視カメラのような隙のない態勢が必要ですが, 辞書出版の事業が置かれている今の厳しい条件の中で, この大型辞典を遅滞なく update し続けることは, コンピューターの力を借りても決して容易なことではありません. しかし他に楽な道はありません. 利用者の皆さまの叱咤・叱正を受けながら間断のない増改訂を続け, 時代の要請に出来るだけ応えられるようこれからも努力してまいります.

  2007 年 7 月
        編者





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