新カトリック大事典 凡例・目次など 前項へ  次項へ


アヴェンパケ Avempace
(11 世紀末-1139)
 
西方イスラム世界を代表する哲学者. アヴェロエスとともに有名.
 
【生涯】西欧でアヴェンパケという名で知られるイブン・バーッジャ (Ibn Bājja) の前半生については, 不明の部分が多い. 11 世紀の終わりにスペインのサラゴサに生まれたが, この町は 1118 年にアラゴンのアルフォンソ 1 世 (Alfonso I, 在位 1104-34)に占領されたため, セビリャに避難し, 後にモロッコに赴きフェス (Fez) で宰相の地位に就いたと推測されている. しかし反対者のために毒殺されたといわれる.
 
【著作と思想】 アリストテレスの自然学, 気象学, 生成論, 動物誌等に関する著作に付した注釈で有名な彼は, 哲学のみならず医学, 数学, 天文学に通暁していたといわれる. 若くして他界した彼の思索は, 未完に終わっているが, 多くの論理学書, 魂に関する書, 人間知性と能動知性の結合を論じた著作がある. 最後の書の主題は 『訣別の書簡』 で取り上げられ, またそれを基礎に代表作 『孤独者の療法』 が書かれている. この著作で彼は, 能動知性との合一を成し遂げたため, その完成により医師も裁判官も必要としないような社会のプランを高度な哲学的議論を用いて描き出している.
 
【文献】
H. コルバン 『イスラーム哲学史』 黒田壽郎, 柏木英彦訳 (岩波書店 1974): H. Corbin, Histoire de la philosophie islamique (Paris 1964).
(黒田壽郎)



新カトリック大事典 © Academic Corporation: Sophia University
前項へ  次項へ